センスのセンス

早速ですが、ちょっと想像してみてくださいまし。
真っ赤な陽から燦々と降注ぐ光を浴びる灼熱の浜辺。其処に何故か場違いの炬燵、そしてその傍らには大きな火鉢が煌々と火を湛えている。炬燵の上には熱々の燗と、美味しい湯気が濛々と立ち込めている水炊きが置かれており、それを汗だくになりながら食すちゃんちゃんこ姿の貴殿……。
いやー、今年の夏は兎に角暑かった、否、「熱」かった。そんな「熱さ」が続いておりましたが、皆様如何お過ごしでしょうか?

えー、小生25歳の時分より「大人の嗜み」として扇子を持ち歩いてましてね、今夏は特に重宝した訳であります。扇子と言えば、いつだったか、映画にもなりましたな。名工と謳われながら、生涯を通じての製作数がわずか6本という伝説的扇子職人の数奇なる半生を描いた超スペクタクル感動巨編、そう、タイトルは確か「シックスセンス」。
……ところで皆様、この「扇子」、名前の由来をご存知でしょうか?
扇子は中国大陸から遣隋使によって日本に伝来。伝来当初、扇子は「センジュ(千珠)」と言われておりました。というのも、要で束ねられている無数の骨の先端に、小さな玉が付いていたためです。で、「いっぱいの玉」で「千珠」という訳です。東京都足立区に千住という地名がありますが、これはその当時、この地に千珠の生産拠点があったことに由来します。今日のように「センス(扇子)」と呼ばれるようになったのは江戸時代の元禄年間で、江戸は日本橋にありました越後屋、のちの三越が、骨の先の玉を取り除き、その名で売り出したのが始まりと言われています。……ウソです…。続けます。扇子の良いところは、何といっても折り畳めて持ち運びが楽って事でしょうな、団扇とは違います。
……ところで皆様、この「団扇」、名前の由来をご存知でしょうか?
……………。ごめんなさい、やめておきます。

えー、で、常日頃扇子を愛用している訳でありますが、酷暑の続くとある日、うっかり持ち歩くのを忘れてしまいましてね、仕方がないので、下敷きでブゥワッサブゥワッサとやってた訳であります。と、思った!
当サイトを閲覧の皆様ならご存知かと思いますが、弊舎、半分が教育事業を生業としております。つう訳で、事務所には小中高生が出入りする訳ですが、「下敷きブゥワッサ」を見た事がないんですな。小生の小中高時代でしたら、「下敷きブゥワッサ」は夏の風物詩。それがないのは、いささか寂しいと思った訳であります。
昨今、学校の設備が良くなって空調も完備され、その必要がなくなったのか?そもそも下敷きを持ち歩いていないのか?その様に種々と考えてみたところ、ただひとつ、明らかになった事があります。

…小生が歳を取ったって事。

執筆者: 春羊(俳号)